建物環境 (Building Environment)
■免震構造
地震時、建物の揺れを「3分に1以下」に低減できます。
耐震構造と免震構造の違い
まれに起こる大地震の際、耐震構造は建物の倒壊によって人命が失われないことが前提となっており、建物の部分的破損や内部にある備品類の破損は許容しています。
一方、免震構造は建物の機能維持を目的としており、手術中に大きな地震が起こっても安心して手術が続けられ、災害後の病院機能の維持が可能で、万一の災害時にも地域医療機関として役に立つ機能と考え採用しました。
耐震構造
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免震構造
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耐震構造は地盤の上に直接建物が建っており、地震の揺れが直接伝わってしまいますが、免震構造では地盤と建物の間に免震のための層を設け、ダンパーをセットすることで地震の揺れをこのダンパーに吸収させます。
■外断熱工法
外断熱工法のメリット
○快適な住環境ランニングコストの軽減(省エネルギー)
○結露が起こりにくい
○建物の耐久性が上げられる
○気密性が高い
内断熱と外断熱の違い
日本では、一般的な地域でも冬と夏との気温差は40℃となります。また、直射日光の当たる建物の表面温度は毎日10〜20℃の温度差を生じています。
内断熱工法では、外壁となるコンクリートが外気温に直接同調してしまい、断熱材を通じてではあるものの、室温もその温度変化を受け上下し易くなります。
一方、外断熱工法はコンクリートを断熱材で覆ってしまうことで、コンクリートが直接外気温の変化に左右されにくく、室温も大きく上下しにくいという特徴があり、1日の室内温度の変化は通常で1〜2℃、年間でも15〜20℃程度に抑制できます。
内断熱工法 |
断熱材を室内側(構造体であるコンクリートの内側)に配置しているため、コンクリートの温度が外気に直接影響され室内の温度も影響されます。 また、エアコンによる室内温度と室外温度の極端な温度差により結露を起こしやすくなります。 |
外断熱工法 |
断熱材を外側(建物全体を断熱材で覆ってしまう)に配置することで、コンクリートを蓄熱材として活用。 そのため、建物自体は外気温に影響されにくい特徴があり、建物の長寿命化・冷暖房の負担軽減・結露の抑制などの効果があります。 |
コンクリートの特質を生かす
コンクリートは熱容量(熱を溜め込む力)が大きく、いったん温まると冷めにくく一定に保とうとします。この蓄熱効果を生かしたのが外断熱工法の最大の特徴です。
冬場に太陽から受けた熱が蓄積されて、夜間には外側にある断熱材で保護され外気温が0〜10℃となっても暖房なしで室温は15℃以上に保つことが可能となります。
※ 耐久性・長寿命・経済性
内断熱工法では、建物(躯体)が外気に直接影響を受けてしまい、昼と夜の内側と外側の温度差は大きく、季節で比較すると、その差はさらに大きくなります。そのため、外壁のコンクリ−トは最大50℃以上もの温度差を受けて、ひび割れを引き起こします。
外壁からの雨水の浸み込みは、このひび割れから進入し鉄筋の腐敗を招き、コンクリートの劣化をさらに増大させます。
一方、外断熱では、外側は断熱材で守られ、室内側はエアコンなどから熱を与えられ、さらに空調コントロールで好ましい環境となっています。
本来コンクリートは100年以上の耐久性があり、30年ほどで解体される建物と100年で解体される建物とでは、建築廃棄物の量は大きく変わります。地球資源のムダ使いやCO2の発生抑制が叫ばれる中、廃棄物の抑制も大切な事と考えました。
■空調システム
外断熱工法を採用することで外気を遮断し、断熱効果と気密性が向上されましたが、『快適な療養空間の創造』には院内の空気の流れも重要となります。
一般的な空調システムは「ミキシング方式」といい、イラストのように、室内の空気をかき混ぜるようにして、室内温度を保とうとしますが、この方式では、室内の空気浄化は望めません。
そこで、当院では「置換え換気方式」を採用しました。「置換え換気方式」は、室温よりも少し低温の空気を低い位置から床を這うように流すことで、室内の汚れた空気が持ち上げられ、その風下となる場所に換気用ダクトを装備しました。
ミキシング方式
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置換え換気方式
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高効率の換気システム
一階の外来待合には、外来用出入り口から侵入する空気の浄化をも考え、高効率の換気システムを設置しました。
このシステムの特徴は、給気側と還気側の両方にフィルターを備えており、館内の空気の清浄化を図り、免疫機能が低下状態の入院中の患者さまの感染防止にも貢献します。
■スウェーデン製の木製サッシュと3層ガラス窓
外断熱工法で建物を建設しても、通常の窓ガラスや窓ワクでは室内温度は逃げてしまいます。そのため、スウェーデン製のものを採用しました。
3枚のガラスに挟まれた2層の空気層には乾燥空気が注入されており、3枚の厚いガラスとともに断 熱性能を持ち、結露を防ぎます。 また、木製の窓枠とサッシュは、見た目の温かみのみならず、天然素材がゆえ温度と湿度にあわせ膨張や収縮するエアタイト構造を兼ね備えており、隙間風の進入や風による振動を防ぎます。
■オーニングの採用

建物の東西と南側にオーニング(日差し)を装備しました。直接的には入院中の患者さまにかかる日差しを和らげるためですが、窓ガラスを通して建物内の空気温度の上昇を和らげるためにも役立ちます。
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